
□キッチン・ストーリー/SALMER FRA KJOKKENET(「ゆっくり、ともだち」は素晴らしいコピーだ)
・2003/95/スウェーデン/ノルウェー
・監督:ベント・ハーメル
・出演:ヨアキム・カルメイヤー/トーマス・ノールシュトローム/ビョルン・フロベリー
<感想
1950年代の北欧。スウェーデンの家庭研究所はとある調査をしようとしていた。それは独身男性の台所での行動パターン。かくしてトレーラーを引き連れた一群がノルウェーへとやってくる。
調査員リーダーフォルケもそのひとり。彼が担当することになったのはイザックという老人だったが頑固で最初はドアさえ開けてくれない。
しかしねばり強く頑張ってなんとか観察が始まった。台所に奇妙な監視台を設置して24時間見下ろして監視する。規則で「口をきいてはいけない」と決められているのでなんとも気まずいふたり。その上イザックは台所で料理をしない。だがいつしか言葉を交わすようになり友情が芽生えていく。だがそれが上司に見つかったとき……
なんともユーモラスな北欧らしい話。家具とか素晴らしい作品を作っている国民性ゆえかこれは現実にあった話だそうだ。この映画のポイントはふたりの友情にある。ほのぼのしていて柔らかくてふたりで正装して誕生日を祝うシーンなどどうしてくれようかと思うほどかわいい。
このふたりの男はとても優しいのが見ているとわかる。特に頑固なイザックはなんとも優しい人だ。眠っているフォルケにそっと毛布(か上着)を掛けてあげたりする。ちなみにこの調査はモニター応募でイザックがなぜ応募したかというと「馬」をくれると聞いたから。でもくれるのは木彫りの赤い馬(笑) ここら辺グッと切ないアイテムにこの馬が使われている。
それにしたってフォルケが来るまで唯一の友人だったグラントの嫉妬がすごい。一般的には人種(両国は仲が悪い)解釈らしいが今まで見せたことのない笑顔で話しているイザックを窓の外から見たり、医者が「彼の体が心配だから連れてきてくれ」に「俺が言っても無駄さ」なんてすごーく拗ねたように答えたり、イザックの誕生日を祝って寝てしまったフォルケにチェロを弾き聞かせているイザックを外からケーキを持って見ていて泣きそうになりながら帰っていったり(せっかく祝おうとしたのに先越されたね)フォルケの上司に規則違反を密告したり、これで別れると思ったらまだ出ていかないのでフォルケが寝ている間にトラクターで引っ張っていって夜の踏切の上に放置したり(けどそれをまたイザックが今度は病気の馬で引いて取り戻しに行く。フォルケは最後まで気付かないけど。そしてそのせいで大切にしていた馬から鼻血が……)と「あいつの行動意味わからん」ってなものが繰り広げられる。
素直に「ああ〜嫉妬か」と思うと違和感ないんだがそういう解釈が思い浮かばない人には悪人か変人扱いだったろうと思うと悲しい。
そんな嫉妬に取り巻かれながら全然気付かずお互いの世界をどうさっ引いてみても仲良しラブを一杯に育むふたりは「クリスマスまで一緒に過ごそう」なんて約束までしてしまうのだが、ラストおもいっきり「監督ハッキリさせてくれよ!」な展開。なぜならフォルケが出ていった後暗闇の中机の上にまるで彼の身代わりにするかのように赤い馬が…… そして身動きもしないイザック。
フォルケが戻ってきてみると病気の馬が引き出され救急車が来ているそして…… と100人が見たら100人までイザックが死んだようにしか見えない展開。その上その後イザックの家にフォルケが住み暮らしている、そしてコーヒーカップは二つ用意されている…… なんてどこかの悲しい恋愛もののようなラストを迎える。
なのにどうも必死でネットで調べると監督的には死んでないらしい。(監督はハッキリそういっていないが監督にインタビューした記事が全部「ラストのコーヒーカップを用意する友情は素敵」なんて締めくくっている。ネタばれはいかんがそういうことか?)
そうだよなあ、そうでないと愛する人を失ったフォルケはそれでも忘れられず彼の家に住み(国の違いも越えて)、彼が生きてるかのようにコーヒーカップを用意するかもしくはグラントとその後友情を育んだことになりかねない。そんなのいくらなんでもヤバイ。
しかしネットで調べてみると「最初はみんな笑ってたのに帰りはみんな陰鬱な表情だった」という感想を見かけたので映画的にこのラストはどうかと思う。映画の感想は監督の意図など関係なくて見た人の感想がすべてだと思うので世論的解釈だと悲しい結末が本筋だろう。
でも私はラスト死んでしまうのはあまりに悲しいので死ななかったことにしておく。
非常にかわいらしい映画なのでホワホワしたいときにお薦め。ラストは各自「あのときはびっくりしましたよ〜」「まだまだ元気だ。死ぬわけないだろう!」を補完せよ!